上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
万延元年遣米使節団を送ってくれる船はアメリカ合衆国差し回しの軍艦ポウハタン号。アメリカ側とすれば不平等条約を押し付けることができたし、送迎費用など“思いやり予算”のつもりであろうか、復路も自国の軍艦を使わせる厚遇ぶりであった。そればかりか滞在中の費用もすべてアメリカ持ち。幕府側としては、それでは面子がたたぬと2万ドルだけ受け取ってもらったそうである。

   馬次郎からの手紙

 安政7年1月18日、ポウハタン号は江戸湾で一行を乗せ、22日横浜を出港した。この船とは別に勝海舟を船将とする幕府の咸臨丸がお供のような形でこれより3日早く浦賀を出ている。中浜万次郎が通訳として乗り組んでいた。
 ポウハタン号は2415トン、乗組員や生きた牛、豚などのほかに77人という大使節団を乗せたのだからその混雑振りは相当なものであったらしい。
 旅の途中で馬次郎が書いた手記(写し)が残っている。出発からサンフランシスコまでであるが、抄記してみよう。「 」内。
 全文は土佐史談28号の平尾道雄氏「山田馬次郎遣米紀行」および『山内家資料 幕末維新第三編 上 第十六代豊範公記 第二巻』101~104㌻に載っている。

 冬の北太平洋、大荒れの毎日である。
 「北風強ク雨零(霙?)交リ来テ大浪ヲ起ス 如此コト三日 寒暖計四十四度 同廿七日東南強ク黒雲四方ニ起タニ至リ暴風益々甚ク高浪山ノ如ク船ヲ潜テ走ル 動揺二十五度ヲ過ル 同廿八日ニ至リ風浪漸ク静也 昨夜大浪ノ為ニ小船及ヒ器物ヲ流失ス」
 艦は当初、サンフランシスコへ直行する予定であったが、ハワイに寄ることにした。逆風のため帆走を妨げられ、石炭を使い過ぎたためである。
 「二月七日船将ビールソン曰 数度逆風ノ為ニ防禦セラレ速ニ前岸ニ達スルコト能ハス 石炭将盡」
 かくして使節団にとって初めての外国は図らずもカメハメハ4世を君主とするハワイ王国となった。12日間の滞在中、馬車に乗り、女性を大事にする社会に触れてさまざまな体験をするのである。
 馬次郎はサンドウィッチ群島を三度維、オワフ島を和保、ホノルルを穂野留と書いている。
 「和保島日記大概 萬延元 二月十四日晝第十時三度維群島ノ中着和保島ノ穂野留(都名)港口ニ船ヲ止ム 米人島人ト共ニ出来ッテ船ヲ港内ニ導ク(中略)即日奉行以下陸ニ上ル」
 波止場には、頭にちょんまげを載せ大小をたばさんだ異様な風体の日本人を見ようと黒山の人だかりであったそうだ。
 一行は「車ニ乗シ」フランス人経営のフレンチ・ホテルに運ばれる。
 「館内数家アリ 皆此ニ宿ス 衆人船中ノ屈気ヲ散センカ為四方ニ遊歩ス 或人商家ニ入テ銀を以テ金ト為シ洋銀数枚と易ル者アリ 商生其實金ニ不省を以テ怒来テ此を館ニ訴フ 茲ニ於テ僕ノ自ラ門ヲ出ルコトヲ禁ス」
 結局、ホテルには5日間いて「十九日旅館を引テ本船ニ帰ル」
 ハワイの行政や自然についても淡々と書いている。
 「王宮港ノ東ニ在リ方数千歩ヲ不過 墻壁壊破シ犬羊越スヘシ 唯旗章ノアルヲ見テ王宮ナルコトヲ知ル(中略)港内米ノ鯨船尤多シ 英米ヨリ此地ニ奉行ヲ置テ事ヲ司ラシム 国王ハ唯西商ヨリ納ル所ノ運上金ヲ以テ生命ヲ存スル而巳 府内ノ商家ハ西人及ヒ支那人ノ造ル所ニシテ美ナリ 土人ハ多ク此ノ僕ト為ル 豪商ハ車ニ乗シテ行 一馬一車ヲヒク 一車四人を乗ス」
 「府外五穀ヲ産スヘキ地モ荒廃シテ唯青草ヲ見ル而巳 府内モ亦人煙稠密ト云ヘカラス 然トモ西國ノ豪商還来テ地ヲ開キ高楼ヲ造リ各國ノ旗章港岸ニ飜リ日日ニ新ニ月月ニ盛ナリ 必数年ヲ不過シテ荒廃青草ノ地モ白壁楼臺ト成ルヘシ」
 カメハメハ4世はこの時26歳、使節団に会いたいといってきた。馬次郎の手記はその会見の模様にも触れている。
 「十八日、奉行以下米人ノ導ヲ以テ王宮ニ至ル 王迎ルニ親臣車馬ヲ以テス 宮門ヲ入ニ及デ樂卒音ヲ発シ紅衣ノ銃兵庭前ニ列ス 別ニ米ノ銃兵此地ニ在ル者宮殿ヲ守ル奉行 殿ニ昇レバ王妻子ト共ニ出見ユ 衣冠禮式西國ノ風ノ如シ 米英ノ奉行此地ニ在ル者其妻ト共ニ來リ會ス 数刻ニシテ旅館ニ帰ル」
 27日、ポウハタン号は正午ホノルル港を出帆した。
 その後の馬次郎の洋中日記は船の向、風向、航走距離を表にしただけ。変化のない船中生活で格別書くこともなかったか。ただ3月7日に「今夜初テ北光ヲ見ル」との書き込みがある。オーロラか。
 12日目、3月にはいってやっとアメリカ本土に着いた。一足先に太平洋横断に成功した咸臨丸は近くの海軍造船所で傷んだ船体を修理中であった。
 「九日第九時、サンフランセスコノ港内ニ碇泊ス 此地近年米人ノ開港スル所ナリ 人煙稠密 船檣林立 砲臺風車 蒸氣車 高楼 海岸人工ノ廣大ナル紙上ニ書シ難シ 其形勢ヲ知ント欲スル者ハ速ニ來リ見ルベシ
  申三月九日從桑方西斯哥
           山田馬次郎
 山田畦三郎様              」

 いよいよ目的のアメリカに到着して、高ぶる気持ちを抑えかねているような息づかいが感ぜられる。17日までこの地に滞在した。(つづく)


↓応援クリック お願いします↓


           ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
          土佐史談会
          高知市丸の内1-1-10 高知県立図書館内
          〒 780-0850
          ℡ 088-854-5566
          Email tosashidankai1917@theia.ocn.ne.jp
          振替口座 00910-3-75719
          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
      ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
      龍馬学10講座-龍馬のすべて-(土佐史談会主催、定員100名、参加費無料)
         場所 高知県立文学館ホール
         時間 午後1時半~3時半の2時間
   日程      講師        講座内容
 5月27日(水)岩崎義郎  坂本龍馬の祖先明智説、龍馬の家族、龍馬の剣術修行と小栗流(了)
 6月 7日(日)小美濃清明 江戸留学と国際情勢(品川)(了)
 7月29日(水)三浦夏樹  土佐勤王党と脱藩事情(了)
 8月 1日(土)佐藤寿良  龍馬と海舟、神戸海軍操練所(了) 
 9月 5日(土)渋谷雅之  龍馬、長崎、船(了)
10月 3日(土)豊田満広  薩長連合、海援隊成立、岩崎との関係、いろは丸
11月 7日(土)広谷喜十郎 福井藩と龍馬との関係・大政奉還への道
12月 5日(土)松岡司    龍馬・中岡の死とその背景
 1月17日(日)谷是     龍馬死後の海援隊とその思想の継承
 2月 6日(土)高橋正    文学に描かれた龍馬像

 参加希望の方は実施予定日の1週間前までに必ず「ハガキ」でお申し込みください。定員いっぱいになり次第締め切らせていただきます(土佐史談会会員を優先いたします)。
      ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
 
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://noburu.blog92.fc2.com/tb.php/60-91b5ef6d
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。