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     『夢の浮世老の道行』から

 河田小龍が他の画人に比べて詩文を能くしたのは岡本寧浦に師事し、奥宮慥斎に兄事したからでしょう。
 明治21年春、小龍は県東部廻りで京都に上ります。翌年から京都府知事・北垣国道(元高知県令)に請われて琵琶湖疏水事業の記録図役を勤めるのですが、その道中を得意の軽妙な筆と本職のスケッチで『夢の浮世老の道行』という紀行文にまとめます。こんな調子です。

 「高知を出でゝのろのろと。野市の里や赤岡の。あかぬながめは岸本の。岸うつ波も浦安の。夜須。手結越して矢ながれや。盡きぬ流も深かれと。しんじやう過ぎてあきたらぬ。遊も多き大山を。打越し行けばなぶらなだ。誰になぶられ笑はれうが。なにかまはずるたうたうと。沙ふみ立てゝ唐の濱。心安くも安田川。なほだまされん田野の里。なんと奈半里の濱傳ひ。なに中山も打越せば。羽根も生なんおもひにて。きらきら見ゆるならしがた。濱の眞沙も拾ひとり。うかうか來る浮津浦。室津の里の室の梅。馨を添へて咲の濱。野根のあさねも白濱や。白けた朝に下戸ながら。甲ノ浦邊のさて一ツ。猪喰までも追詰めて。とくりとものを徳島に著くや夜舟も難波津の。かた葉のあしにすれ違ふ。汽車の烟の絶間なき。都の室にいざやいそがん。」

 次々と地名を織り込みながらリズム感あふれる文章が続きます。 

 ところで、7月3日の第44回に「さいとう・べっとう・さーねもり」の題で各地の虫送り習俗について書きました。そのなかでは紹介できませんでしたが、『夢の浮世老の道行』のなかに小龍が見かけた室戸の虫送り行事の描写があります。

 「此里(佐喜濱)に珍らしき祭あり。舊暦五月二十日てふ日に當れば。村々の民共白絹の幟を作り。其尖へ赤き絹を附け。これを縦横に振り廻し。二流踊り行けば。其迹邊には鐘を打ち太皷を撃ち。さまざまの装して。鐘を打つ者は低く踊りて歩み。大皷を撃つ者は高く歩みて踊り。其足取のあやしき。喩へん方もなし。去るに其童子共は皆々能く其業を習ひ覚えし者と見え。調べのよきは是亦不思議なる事にこそなん。各々村々より斯く踊り出し。河原へ出づれば。一群圓く立ちならび。太皷うつ者の中にて。其頭して謡を歌へり。
 其謡を聴くに「源の牛若丸母の懐を離れ出てより。鞍馬山に住みて人と為り。國々巡り陸奥の國へと赴きける。頃しも春の末つかた。櫻、山吹咲き乱れたる家の中に娘のあるに縁を求め」なんど。総て牛若丸人と為りて。驕る平家を亡したる抔の事共を細やかに謡ひ。又、袂の如くに一ながれに連りたどり。踊などして町中へまで廻り。湊の邊にて又、前の如く踊などして。幾群と斯くの有様にて。其處や此處やにつどへる事の可笑さ喩へん方なし。
 これを実盛祭とも送蝗祭ともいひなせり。
 惣して土佐國は土佐、吾川、長岡、香美の四郡を中土佐と称へ。安藝の郡を上土佐といひ。高岡、幡多両郡を下土佐といへり。下土佐ハ知らねども。中土佐も虫送てふものあれども。皆、鐘皷のみ打鳴して虫を逐ふの様を爲しけることは多けれども。斯る珍らしき虫送ハ見聞せしことなし。又、此處へ斯る時に行逢ふことのありけるハ。これぞ旅の土産とこそいはん。」

 長々と引用しました小龍の紀行文には軽妙なスケッチ画も添えられていたといわれますが、残念ながら現存しないということです(鍵岡正謹著『河田小龍 人と作品』)。高知県立美術館が平成15年に開いた展覧会の図録(同美術館発行、3500円)にも当然ながら載っていません。戦前の土佐史談56号(昭和11年)に松村巌氏が抄録した文章でその一部を知るのみであります。                     (おわり)

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12月 5日(土)松岡司    龍馬・中岡の死とその背景
 1月17日(日)谷是     龍馬死後の海援隊とその思想の継承
 2月 6日(土)高橋正    文学に描かれた龍馬像

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